労働文化研究院

思考の過程と飛躍の記録

場所的存在としての企業

道路交通法と同じくらい守られていないのが労働基準法だとよく言われます。実際、完全に労働基準法通りの経営を行ったとすると、使用者だけでなく労働者までもあまりの窮屈さに潰れてしまうのではないだろうか。労働法はそれだけ複雑怪奇な仕組みになってい…

ホスピタリティ保育

サービスとして利益追求をすれば保育にはならない。 保育園と家庭での子どもは違い、保育園でできることが家庭でできないとしても、保育園でできるのだから本人にはそれをするだけの力はある。むしろ、家でできないということはそれだけ社会性を身に着けてい…

学校化に抗して

僕はよく、教育に対して厳しすぎると指摘されます。基本的に僕の教育に対する考えの支えはイリイチの「脱学校論」なのでどうしてもそう思われても仕方ない。 しかし、どんなに学校とは政治装置であるといったところで学校をなくすことはできない。なぜなら、…

日常に潜む不能化

ある小学校の前を通る際、交差点に毎朝交通安全のために高齢者もしくは教員が立っています。それ自体は問題ないのですが、僕がおかしいと感じるのは当該の生徒が横断するときにしか黄色い旗を持って横断者がいることを示さないことです。 生徒以外は完全にス…

佐藤雅彦著『新しい分かり方』を読了

巷には様々な情報で溢れています。ある対象物についてスマホで調べれば分からないことはありません。では、僕たちは対象の何を分かったのでしょうか。また、どうして分かったと言えるのでしょうか。 この本は、自分がいかに「分かる」のかを客観的に知ること…

佐藤卓著『塑する思考』を読了

とてもデザイナーが書いた本とは思えないくらい深い考察がされています。 デザイナーと言えども、モノの構造だけを考えていてはいけないのだと分かった。 題名にある「塑する」とは、塑性のことです。弾力性は衝撃をはね返し、元の形に戻ります。塑性は衝撃…

雇用身分

ある会合で、働き方を考えるワークショップについて話し合う。参加者の職種は様々だが、みんなこぞって生産性向上を訴える。非常に危機感を覚える。 そもそも、生産性とは何なのだろうか。生産性だけで評価をするなら、生産性の低い人は排除されてしまう。し…

煽り運転

煽り運転は確かに危険であるため、事故を起こした時の厳罰化は必要。しかし、報道を見ていると、ドライブレコーダーを普及させようという意図が見え隠れしている。煽り運転が原因の事故報道を見た人は、もしもの時の証拠固めとしてレコーダーをつける必要性…

認識のズレ

日本の社会運動の発展は一体どこが契機なのかを考えると、まぎれもなく3・11東日本大震災であろうと思います。しかし、共産党をはじめとする革新系勢力では「集団的自衛権の行使容認」が契機とされます。 この認識の違いは大きい。 原発事故によって多く…

相も変わらず進む「学校化」

NHKの地球ドラマチック「世界の果ての通学路」を視聴しました。 ペルーの高山地帯で暮らす男の子、ルーマニアの森の中で暮らす女の子、フィリピン・マニラのスラム街で暮らす女の子。それぞれ、将来への希望を抱いて学校へ行っている。今回の番組は、この…

日本人の議論下手はどこから

日本人は議論が下手だとよく言われます。僕もそうだなと思うことはよくあります。何のために議論してるのだろう?と疑問感じる会に遭遇することが多すぎるくらいです。 そもそも、日常的に意見表明をする機会が少なすぎるのが日本です。根本はお金=資本に対…

新しい労働運動の提唱に向けて

7月11日、おかやまいっぽんの市民政策(経済・労働)についてあれこれと議論。基本的に話の通じる人たちとの議論なので言いたいことは言えた感があります。 結局のところ僕たちは、どんなに時代が変わろうとも再分配を巡って争っているにすぎないのかもし…

徴兵制と戒厳令

戦前の日本の徴兵制については、大江志乃夫さんの『徴兵制』が最もまとまっていると思います。 キム・ドゥシク氏の『平和主義とは何か』は韓国における徴兵制を扱った本であるため、比較して読むと非常に面白い。 徴兵制も平和を考えるうえで非常に重要なの…

「個性」(2016.6.23)

はじめに 労働者が資本家になることはできない。しかし、才能(タレント)が備わった存在であり、資本を活用することでその才能を労働力として発揮する資本者となることはできる。しかし、産業経済社会の中にあっては、個性・卓越性を発揮することは許されな…

労働者にとっての労働(2015.11.9)

はじめに 近年労働の強化が掲げられている。成果主義の導入、非正規労働者への置き換え、残業代ゼロなど企業の利益を最大化するように労働のあり方そのものが失われ、当然労働者は厳しい労働環境で生活苦を強いられることになる。しかし、労働そのものについ…

シリーズ・労働者のことばを大切にしよう(2015.5.20)

はじめに 労働者の中で賃上げを望まない人はいないだろう。一方で、当の労働者の口から「賃上げは雇用を減らす」「経営が成り立たない」などということばも発せられている。これは実に不思議な現象のように感じる。労働者と使用者が分かり合えないことはこれ…

新しい時代の活動家論(2014.4.20)

1。青年活動家の苦悩 2012年7月29日~31日に第26回全労連定期大会が開催され、今後の組織強化をどう図るのか。そして、次代を担う活動家をどう育成するのかを中心とした議案が提案された。討論に参加した青年からは、「今頃青年の組織強化、育成に本気で取り…

ヤーコ・セイラック著『オープンダイアローグ』を読了

オープンダイアローグとは、要は対話によって精神疾患を癒すということ。日本では、このことだけが独り歩きし、対話ですべてを解決できると勘違いされているように思う。 原題を直に訳すと、社会的機関における対話というもの。オープンダイアローグという題…

田中治彦編著『SDGsと開発教育:持続可能な開発目標ための学び』を読了

SDGsとは2030年を目途に国連が発表している持続可能な開発に関する目標です。 SDGsには目標として17項目があります。持続可能な開発、民主的なガバナンスと平和構築、気候変動と災害に対する強靭性など。しかし、SDGsを達成するためには、複数の…

キム・ドゥシク著・山田寛人訳『平和主義とは何か』を読了

キムさんは平和主義者なので根本は軍隊そのものに反対なはず、それでも兵役に就く若者を否定することはしません。それどころか、兵役拒否の後に待ち受ける厳しい現実を考えると、代替服務、執銃拒否や自身が平和主義者であることを軍隊内で訴える方がいいと…

福原義春著『文化資本の経営』を読了

暑いためか読み終わるのにほぼ1ヶ月も要してしまいました。 場所と環境を結びつけること=非分離設計。例えば、空間を支えているシステムやルール、美意識などは地域ごとに異なります。銀座や原宿に建築物を建てる際に、建築と場所ごとの個性が一体化してい…

土井善晴著『一汁一菜でよいという提案』を読了。

一汁とは味噌汁のこと、一菜とは香の物のこと。 この本は家庭で忙しくて料理ができないと思っている人、自炊をしたことがない若い人を対象にしています。 家庭で作る料理は特別美味しい必要はないというのが大切だと思いました。また、家庭料理、プロの料理…

北原亞以子著『銀座の職人さん』を読了

銀座に店を構える様々な職人が紹介されています。職人と言えば、頑固で、弟子に対して理不尽というイメージですが、北原さんの描く職人は真逆のイメージです。 弟子に自身の技術を伝えたいという思いに溢れた職人が描かれています。というよりは、そうだから…