福原義春著『文化資本の経営』を読了
暑いためか読み終わるのにほぼ1ヶ月も要してしまいました。
場所と環境を結びつけること=非分離設計。例えば、空間を支えているシステムやルール、美意識などは地域ごとに異なります。銀座や原宿に建築物を建てる際に、建築と場所ごとの個性が一体化していることを非分離と言います。
NPOセンターでのCSR普及活動に携わることが無かったら気づくことのできなかった領域です。
前に一度読んだときは何のことかさっぱりわからず理解できなかったのですが、自身の問題意識が整理された中で読むと伝わってくるものがあります。
文化資本とは、、資本を「資金」「財」のように物質的に内部化してしまう近代産業経済のあり方に対して、資本の活動をエコノミーの総合的な活動として開いていくために、外在性へ転移させようというもの。
1)どこにもなかった新商品、新サービス、新システムなどを生み出していくように、目に見えない何かを目に見える形にしていくこと。=文化化
2)商品を社会的なスケールで普及していくこと。=社会化
3)信頼、誇り、尊厳や権威を表徴する。=象徴化
外在性へ転移するとは、企業の場合は、自らの経営を言葉で語り、表象し、場所をつくり、資本を形成していくこと。
さらに重要なものとして、4)すでに手元にある文化力を経済化するように、商品を開発したりデザインしたりして、単なるモノづくりではなくモノにまつわる情報や雰囲気をつくる。=想像化
文化資本の形成過程ではこれらが複合していく。文化資本の経営とは、商品だけでなく、空間、企業ビジョン、コーポレート・ガバナンス、社員教育などを文化に位置づけるものといえる。経済が文化を生むのではなく、文化が経済を生むというもの。
非常に多岐にわたる内容の本でとてもまとめきれるものではありませんが、CSV経営とも深くかかわるのではないかと思います。
企業・経営をメインに論じた本ですが、企業は話の材料にすぎず、労働組合、NPO/NGOなど色々な組織の運営にも適用できます。
山哲経済思想の入門にも最適です。